運動学習力とは

どうもM2です。

これまで6アビリティーのうち5つの能力の概要を解説してきました。

今回は6つ目となる運動学習力です。

上達しないのは指導者のせい?

指導の現場で「生徒がやる気を起こさないのは、指導者の力不足だ」と言われることがあります。

指導者が分かりやすい説明ができていない、生徒さんを引き付けられる話し方をしていない。といった生徒さんのパフォーマンスが上がらない原因は指導者側にありとする考え方です。

確かに、素晴らしい指導者を取り上げたドキュメンタリーで、生徒さん達が劇的に上達させていくのを見ると、すごい指導力だな。生徒さんのやる気が変わっていっている。と感心するものです。

そう考えると、その逆も当然ある訳で、つまらないと感じてしまっては生徒さんの上達が見込めず「指導者が悪い」となるのは常識的に理解できます。

しかし、私は生徒さんが上達できないのは、すべて指導者のせいとは思えません。

指導者側の限界

上記のような「生徒たちが変わる」ストーリーは、学校だったり、勝つ事を目的とした競技志向が前提で、やってもやらなくてもいい『楽しんでやる趣味』ではないことが殆どです。

そんな指導現場って何?というと、私の過去の経験では英会話スクールです。

大手のスクールに2年ほど通ったことがあります。この時の私は、漠然と英語ができたらカッコいい。なんとなく友人ができるかも、が入会目的でした。

いや、正直にいいます。

彼女つくれるかも・・・。そう思っていました。

で、実際に通ってみたんですが、絶対います。私と同じ目的のやからが(笑)。だって、明らかに受付の女性とかが可愛くて優しくて丁寧。受講者に若い女性がたくさん。年に何回も会員交流と題したパーティー(欧米か!)があるんですもん。

ま、かくゆう私は彼女こそつくりませんでしたが友人はできました。

そこで同じクラスになった男性サラリーマンがいました。このスクールは日本人講師も半分くらいいましたが、レッスンは日本語禁止。分からなくてもジェスチャーなどで何とかやりきるスタイルをとっていました。

なので全く英語ができない状態では、結構しんどくストレスを感じます。そのため、講師の方々はとても一生懸命雰囲気を明るくしたり、生徒のモチベーションを上げるために必死で、それを好意的に感じていました。

でも、この男性サラリーマンは、分からないとすぐに日本語で話しかけてきます。口癖は「いや、難しいな!!無理だわ」あきらめ早いな。と若かりし自分でも思いました。

講師の説明が分からないと隣の人に「ねえねえ。今のなんて言った」とすぐに聞いたり、その度に日本語が教室内にでてしまう。ちょっと講師の方がかわいそうだとも思いました。結局、この方は昇級できず気が付いたら会わなくなりました。

この方の英語が上達できないのって講師のせいですか?

スクール的には、「講師がもっと生徒さんがやる気でるように工夫しなさい」みたいな業務指導が入るのかもしれませんが、このレベルでは無理です。明らかにこの方の性格や内面が変わらない限り。

この英会話スクールをはじめ、自治体が無料で提供する〇〇サークルなど、「参加者はやる気がある」「やらないと叱られてもしかたない」とは違う学びの現場は数多く存在するはずです。そして、そこには当然指導者がいます。

このような場合には、さきほどの男性のような方は多くいるはずで、それを全て講師の指導法に責任がいくのはナンセンスだと思います。

上達には習う側の能力も必要

このように、何かを上達していくためには現実問題として「習う側の力」が必要です。当然ながら運動の上達にも必要で、これが「運動学習力」です。

私は、何百人という方の卓球を指導してきましたが、「運動学習力」にはその方の性格や過去の経験が大きく反映されていると感じます。

そして、この力が低い方は例外なく、上達しない又は上達のスピードが遅いです。特に大人の場合には、これを指導者側が伸ばすことは困難です。なぜなら、性格や思考まで変えさせられるほど「趣味の習い事」に力を入れられる時点で「運動学習力が高い」からです。

ここで、誤解がないように説明をします。これは運動に特化した考えであって、その方が勉強や料理や習字といった全てのものが上達しない訳ではありません。事実、ご職業が高学歴と直結するものや職場でも高い地位にあるといったケースは多くあります。なので「運動学習力が低い=なにも手くいかない人」ではありません。また、「指導者が諦めて適当に指導してよい」と言いたいのでもありません。

運動学習力を理解した上で受講者と向き合う

では、どうしたらいいのでしょうか?

結論からいうと「受講者との距離感にバランスをとり、お互い無理のない関係でいる」です。

指導経験が浅い、または始めたばかりの方は、特に「何とか上達させねば」という気持ちが強いでしょう。その場合、「この人はやる気がない、自分の言うとおりにやらない。」と相手を責めてしまったり、なんで上手く伝えられないんだと自分を責めてしまいます。

そうではなく、「今は運動学習力が低い人」と割り切って指導するのです。一生懸命言葉で説明する時間をとっても、何を頑張っても“今”は上達しないのであれば、単純にプレーする時間を多くつくってあげて楽しませる。それだけで、「運動空間認知力」や「運動速度調整力」は伸びていく可能性はあります。何よりも、本人もそれを望んでいるはずです。

運動によって「運動学習力」を高め、生きる力を伸ばす

前述したとおり、これは性格や過去の経験が大きい力のため、大人の場合は伸ばすことが難しいです。

しかし、子供の場合は違います。特に小学3、4年生ぐらいでは、なぜ自分が卓球を習っているのか理解していない子も多くいます。そのため、練習中に悪ふざけをしたり、走り回って話を聞かないことはしょっちゅうです。

そうであっても、その行動に対してきちんと注意を行い、上記のような思考で指導を続けていくと「コーチの言ったとおりにやったら上手くいった」が生まれる瞬間がでてきます。

そのタイミングを逃さずに「君の頑張りでできたよ!!」と認めててあげます。そして、それを積み重ねていくと「コーチの言うとおりにいくと上手くなれる自分」を認識していき、コーチや自分自身への信頼、上達するための意欲が湧いていきます。これが「運動学習力」が高まっていく過程です。

子供にとってはこの経験はとても貴重です。まさに生きていくための力そのものだと私は思っています。これこそが、子供時代に運動をしておくべき最大の理由といえると私は考えています。

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